カセットデッキ

REVOX B-710

写真はクリックすると拡大して見ることができます。
REVOX B-710 写真1
スイスのテープレコーダーメーカーREVOXの傑作B-710の修理依頼を受けました。
ご覧のように、メンテナンスマニュアルも送っていただいたので何とか修理できました。
最初の、症状としては右側の出力が無いということでした。
見ての通り、右側LEDレベルメーターが点灯しません。
REVOX B-710 写真2
早速、マニュアルが活用されました。
ヘッドから信号を追いかけると、ヘッドアンプから出力されていない事が分かりました。
また、録音が出来る事が確認されておりますので、あくまでもヘッドアンプ内部の問題と特定されます。
怪しいところを当たって行くと、電解コンデンサーが一個、機能しておりません。
このコンデンサーを交換したら、右チャンネルからも音が出ました。
REVOX B-710 写真3
丸で囲んだコンデンサーが交換した国産コンデンサーです。
矢印の付いたコンデンサーと同じ物が付いておりました。
しかし、後で考えると、この矢印のコンデンサーもこの時交換しておくべきでした。
このときは機能しているものを交換することによるリスクを恐れておりました。

修理依頼内容は右チャンネルの音を再生させる事と、オーバーホールです。
右チャンネルから音が出ない限り、オーバーホールしてもしょうがありません。
オーナー様に右チャンネル復活を知らせると、喜んでくれました。
REVOX B-710 写真4
外したコンデンサーはこのようにショート状態です。
基板に付いた状態ですと、電圧差が無いと異常と確認されますが、この基板は外さないとプローブが入りません。
REVOX B-710 写真5
内部の様子です。
機能ごとに内部が仕切られており、見やすいです。
問題の基板(ヘッドアンプ)は後の一番右の基板です。
国産物と違って、パソコンのスロットみたいな考えで、コネクター線類は少なくスッキリとしております。
REVOX B-710 写真6
基板を取っ掛かりに、電装部品のメンテナンスから行いました。
スイッチ、ボリューム、リレーなど、接点のあるものは全て接点を磨きます。
REVOX B-710 写真7
リレーも日本では手に入らないので、部品を分解して、接点を磨きます。
REVOX B-710 写真8
パネルなどの外装部品は外して水洗いです。
マジックリンを使用して長年積み重なったヤニや油汚れも落とします。
REVOX B-710 写真9
外装を外すとこの通り。
外さない物は、アルコールウエットで拭き取ります。
メカはそっくり外してオーバーホールです。
REVOX B-710 写真10 10
メカをそっくり外します。
国産物と比べても、メンテナンスしやすい構造です。
REVOX B-710 写真11 11
メカ完全分解です。
圧巻なのは、二つのキャプスタン用フライホイールです。
軸受けを見れば分かりますが、前後にずらして配置しておりますので、カセットテープのキャプスタンの穴間隔の制約を受けません。
たっぷりと直径80mmほど実現しております。
この辺まではAKAIもGXC-750Dでやっており、フライホィール効果は期待できます。
REVOX B-710 写真12 12
しかし、国産品が平ベルトで結んだクローズド・ループ・デュアル・キャプスタンに対して、なんと、フライホィールに磁石を仕込み、コイル基板と組み合わせる事による、クローズド・ループ・デュアル・モーター&キャプスタンになっているのです。
モーターはデュアル・キャプスタン用に2個あります。
REVOX B-710 写真13 13
そしてリール用に2個あり、全軸直結です。
つまり、消耗品のベルトやギアは一切使っていないのです。
国産機はクローズド・ループによるテープテンションは軸の大きさなどを変えて作り出しているのですが、REVOXは完全電子制御で行ってます。
REVOX B-710 写真14 14
ヘッドブロックとピンチローラーの押さえつけは、この大型のプランジャーで行っております。
これも、いわばダイレクト駆動です。
カムやギアやベルトと言った、間接駆動は一切使っておりません。
後は電子制御で適切にやってくれと言う訳です。
ほれぼれする設計思想ですね。
REVOX B-710 写真15 15
ヘッドブロックです。
今回は、このゴムピンチローラーをウレタンピンチローラーに交換することも含んでおります。
3ヘッド構成ですが、消去ヘッドが後ピンチローラーの後ろに配置で、これも国産品には無い発想です。
REVOX B-710 写真16 16
ピンチローラーはこのように、真鍮ワッシャー2枚、樹脂ワッシャー2枚、Cリングと言った構成です。
このゴム部分以外全て再利用します。
REVOX B-710 写真17 17
ゴムピンチローラーは100℃のお湯に漬けてから剥がします。
しかし、接着剤で芯金にゴムが付着しております。
REVOX B-710 写真18 18
リューターにワイヤーブラシを取り付け付着したゴムを落とします。
芯金は外側にローレット加工、内側にはオイルレスメタルを使っていると推測されます。
REVOX B-710 写真19 19
二つとも同じ部品です。
接着剤で貼り合わせます。
はみ出た接着剤は乾いてからピンセットなどで簡単に落とせます。
REVOX B-710 写真20 20
ピンチローラーを装着する前にヘッドブロックをピカピカに磨きます。
ピンチローラーアームも抜き取ってクリーニング、グリス給油しております。
REVOX B-710 写真21 21
オリジナルのウレタンピンチローラー装着です。
このヘッドブロック全体が口の下あごのようなスイングアームになっております。
REVOX B-710 写真22 22
さて、全組立が終わり、試聴に期待が高まります。
しかし、ここで問題が発生です。
右チャンネル再生が復活したとき、ノーマルテープでしか音を確認しておりませんでした。
しかし、テープセレクターをTYPEⅡ、Ⅳにしたときに左チャンネルから周期的なノイズが発生です。
また、振り出しに戻ったようでがっかりです。
実はこの日に修理が終わる予定で、後の日程が詰まっておりました。
オーナー様に事情を話し、一ヶ月待ってもらうようにお願いしました。
5月の始め頃です。
もう6月の修理スケジュールも埋まっておりました。
その時点で他にも修理途中の機器が数台溜まっていました。
スケジュールも思わぬ問題が発生して遅れ気味です。
催促も来ます。

もうバンザイです。
新規のお客様の対応にまで手が回りそうもなかったので、ホームページの「お問い合わせ」を一時閉鎖することにしました。
REVOX B-710 写真23 23
6月の修理スケジュールを全てこなし修理再開です。
もう、原因は分かっておりました。
右チャンネルを復活させたとき、残しておいたもう片方(左チャンネル)の電解コンデンサーです。
同じように劣化してあるはずです。
REVOX B-710 写真24 24
こいつです、こいつが全ての悪の根源です。
二つとも新しい物に交換しました。
これで、左チャンネル、テープセレクターTYPEⅡ、Ⅳの周期的ノイズは無くなりました。
REVOX B-710 写真25 25
まず、ヘッドを消磁します。
このシンプルなカセット装着方法を見てください。
蓋なんてありません。
それでいて、テープ操作中は下のツメでカセットをロックします。
国産機は更に、電動蓋と言うまるっきり意味の無い事をやって、蓋がベルトなどの劣化によるイジェクト不良をおこし、寿命を縮めました。
REVOX B-710 写真26 26
次に3KHzの信号を録音したテストテープの再生です。
レベルメーターも綺麗にマイナス10dBのところで左右そろっております。
ひとつだけ、このB-710に注文をつけるとすれば、このレベルメーターです。
プロがまだ使っている(と言うよりプロは使い続ける)VUメーターにして欲しかったです。
正確に0VUに合わせるなんてことはデジタルメーターでは不可能です。
そしてデジタルメーターこそがメーカーにとってコストダウンになっているのです。
精度の良いVUメーターがどれだけ高いか調べてみれば分かります。
REVOX B-710 写真27 27
もう調整無しでぴったり3KHzです。
ピークの尖がり具合がまた良いです。
-60dB以下のノイズは無視して良いレベルです。
クオーツロックの文字はマニュアルでは見られなかったですがおそらくクオーツロックでしょう。
時計ではクオーツロックで日本に負けたスイスが精密機械では本領を発揮しておりますね。
REVOX B-710 写真28 28
次に6.3KHzのアジマスチェックです。
REVOX B-710 写真29 29
全然問題ありません。
よく、ヤフオクで「アジマス調整をしました」と言う出品を見かけます。
私でも、アジマス調整するカセットデッキなんて50台に1台くらいです。
電動蓋が壊れて、無理やり開けて大事なカセットテープを取り出したと思われる、テープガイドが壊れているような機器でもなければアジマスは狂いません。
本当に一台一台やっているとしたら狂わしているとしか思えません。
REVOX B-710 写真30 30
次にテスト信号のCDを再生して録音のレベルチェックと調整です。
REVOX B-710 写真31 31
各調整は割愛しますが、この機に限らず、全ての修理依頼のあるカセットデッキには必ず行っているチェックと調整です。
最初に調整ボリュームにマーキングしておいていつでも戻せるようにします。
最終的に回したボリュームの写真を撮っておいて、次回のメンテナンスの参考にします。
ユーザーさんが勝手にいじっても分かりますので、こういうクレームは受け入れられません。
REVOX B-710 写真32 32
必ず90分テープでテープパスのチェックをします。
テープガイドがずれている場合、90分テープが折れたりキャプスタンに絡まったりします。
ここで異常発生です。
シックネスゲージ(薄い真鍮板)を3枚挟んで調整しているはずのテープパスが乱れました。
消去ヘッドに貼り付けてある後ろテープガイドを調整しないといけません。
REVOX B-710 写真33 33
B-710専用シックネスゲージで3枚挟んでありました。
これを1枚にしたところ調整が取れました。
REVOX B-710 写真34 34
これはテープパスのチェックに欠かせないミラーカセットと言う道具です。
現在、どこでも売られておりませんので、江戸川事業部に頼んで作ってもらいました。
今後は標準のチェック&調整作業に盛り込みます。
アジマス調整などよりはるかに頻度が多く、実用的な調整が出来ます。
この、ミラーカセットもオリジナル商品として販売を計画しております。
REVOX B-710 写真35 35
REVOX B-710との印象に残る出会いでした。
カセットデッキの最高峰として記憶に残る事、間違い無しです。
音もきっちりとした骨太の音です。
ミュージック・カセットを生産するマスタークラスの実力を備えていると思います。
私は、こういうものに出会いたい為に、修理業をしているのだと思います。
オーナーさま、ありがとうございました。
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